麺類の地域ブランド力
~地域ブランド力とは~
麺類の地域ブランド力。ちょっと難しいタイトルになってしまいましたが、日経流通新聞(2007.3.5)に「食」の地域ブランドランキングという記事があり、その中に、麺類の地域ブランド力も載っているので、そのことについて考えてみたいと思います。
まず、地域ブランド力とは実力度指標で順位付けされていおり、消費者調査、6項目(知名度、体験度、地名アピール度、商品力、地域独自性、購入意向)ごとの回答割合(%)の偏差値の平均。
このうち、体験度とは「自分の家で買ったり、食べた経験がある」割合。購入意向とは「その地域に行けば、ぜひ買いたい」、「行かなくても、店で売っていれば買いたい」、「ネットなどで取り寄せたい」のどれかに該当する割合となっています。
では早速、麺類の地域ブランド力を見てみましょう。
~長崎ちゃんぽん麺が1位~
【実力度指数】
1位 長崎ちゃんぽん麺(長崎) 77.1
2位 喜多方ラーメン(福島) 74.0
3位 信州そば(長野) 73.2
4位 長崎皿うどん麺(長崎) 72.3
5位 稲庭うどん(秋田) 70.4
6位 三輪素麺(奈良) 66.8
7位 戸隠そば(長野) 66.4
8位 名古屋名物きしめん(愛知) 65.0
9位 名古屋味噌煮込みうどん(愛知) 64.7
10位 沖縄そば(沖縄) 63.1
このランキングを見て、どのような感想をお持ちでしょうか?
私の第一印象は、ちょっと意外という感じでした。
まず、長崎ちゃんぽん麺が1位ということ。
確かに、長崎ちゃんぽん麺は有名ではあるけど。
これまでさんざんラーメンの人気について語り、(例えば“ラーメン、そば、うどんの人気”、“お酒の後のラーメン”、“おせち料理とラーメンの関係”などのページで)ラーメンはキング・オブ・フーズみたいに言ってきたのに、1位はちゃんぽん麺。
まぁ、長崎チャンポンについてはラーメンのはなしを始めた頃、長崎チャンポンで取り上げているし、2位の喜多方ラーメンについても喜多方ラーメンで取り上げているので全国的にも有名であるし納得は出来ます。意外だったのは、それ以降で、ラーメンがひとつも入っていないこと。博多ラーメンや札幌ラーメンより、そんなに長崎ちゃんぽんや喜多方ラーメンはブランド力高いんだって感じです。
~長崎ちゃんぽん麺と喜多方ラーメンのルーツ~
中国生まれの潘欽星(はんきんせい)さんは、大正末(1926)頃、長崎にいるはずの叔父を頼って日本に来ましたが、叔父は長崎にはおらず、尋ね回った挙句、福島県の喜多方でやっとめぐり合うことが出来ました。
この文章は“喜多方ラーメン”の冒頭の1文です。
太めで固めの長崎ちゃんぽんと喜多方ラーメン。潘欽星さんが長崎で食べたちゃんぽん麺がルーツになっていると言えそうです。
このような歴史的背景も、商品ブランドを高める力になっていると言えるのではないでしょうか。
~その他のラーメンは何故ランクインしていないのか~
では何故、その他の有名であり日本人に最も人気がある料理ともいえるラーメンがランクインしていないのか?
確かに、
3位以降の信州そばなど有名ブランドではあるが、
それにしても・・・である。
これはちょっと考察しておく必要があるのでは?
ということでちょっと考えてみましょう。
一つは、地域ブランド力を決める際に、知名度、地名アピール度、地域独自性という項目が入っていることです。
よく見てみると、長崎県が2つ、長野県が2つ、愛知県(名古屋)2つと、3県だけで6/10です。これはどういうことを意味するのでしょうか?
県そのものが強烈な特徴を持っており、
イメージが湧きやすいと考えられないでしょうか?
そして2つ目は、地域ブランド力の項目にある、
体験度=「自分の家で買ったり、食べた経験がある」割合。
購入意向とは「その地域に行けば、ぜひ買いたい」、「行かなくても、店で売っていれば買いたい」、「ネットなどで取り寄せたい」というように、どちらかといえば外食より、家庭料理として食べる方に重きを置いた調査になっているのではないかということです。
“長居できるラーメン店”で、“好きな料理ではいつも上位にくるラーメンが、一番作る料理では、10位にもはいらない。”という一文があります。
これは、ラーメン(特にスープ)は家庭で作るのが難しく、外食が主流であると考えると、そば、うどんの方が家庭用としてのブランド力は高いといえる結果だと思います。
~長崎ちゃんぽん麺と喜多方ラーメンが強い訳~
ここまで考察してきましたが、その中で長崎チャンポン麺と喜多方ラーメンは、ちょっと強すぎるような・・・。
日経流通新聞によると、“全国チェーン展開する外食店がある「長崎チャンポン麺」、「喜多方ラーメン」が1、2位”と書いてあるんですけど、長崎チャンポン麺はリンガーハット、喜多方ラーメンはどこでしたっけ?それに他の有名なラーメン店も全国展開してますよね?チェーン店の規模とか、よく調べてみないとこの辺の相関関係は、よくわからないですね・・・。
~全食品トップは夕張メロン~
最後に全食品、「食」の地域ブランドランキングをみてみましょう。
【実力度指数】
1位 夕張メロン(北海道) 91.4
2位 魚沼産コシヒカリ(新潟) 87.8
3位 長崎カステラ(長野) 87.2
4位 松坂牛・松坂肉(三重) 81.9
5位 宇治茶(京都) 80.9
6位 京の生八ッ橋(京都) 80.1
7位 (純鶏・純系)名古屋コーチン 79.9
8位 静岡茶(静岡) 78.0
9位 長崎ちゃんぽん麺(長崎) 77.1
10位 琉球泡盛(沖縄) 76.8
夕張市は、財政再建団体になって大変そうですけど、
夕張メロンは起爆剤にならないんでしょうか・・・。
それはさておき、やっと9位に長崎ちゃんぽん麺が入っています。
~麺類のブランド力を高めるために~
こうやってみると麺類もまだまだブランド力を高めていく必要がありそうです。広島のラーメン、そば、うどんにしても、お店によって味は一緒ではありませんし、その質もバラバラという現状もあると思います。それぞれの店舗、メーカーが切磋琢磨してしのぎを削ることが麺類のブランド力を高めることに繋がると思います。そして、それは麺業界だけの話ではなく、歴史的背景をいかした地域全体のイメージアップづくりも必要になりそうです。