麺の販売方法
~これからの麺とは~
これまで、「うどん,そばのはなし」、「ラーメンのはなし」の中で、麺について色々と考察してきました。
そして、日本人がいかに麺好きであるか・・・その中でも、男性は特にラーメンが好きで、女性はパスタ好きが多いこと。そして、食文化的には、西日本はうどん系、東日本はそば系であること。また、ラーメンは外食中心であることetc。
では、これからの麺は、どういったものが求められているのか?これから高齢化社会を迎えるということも含めて、今後の麺について考えてみたいと思います。
麺業新聞(2007.9.15)にこんな記事が載っています。
以下、その抜粋です。
<高齢者ほど簡便食品をよく利用している>
これまで高齢者世帯ほど手作りの食品を食べていると見られてきた。だが、これはどうも間違いのようだ。確かに各種のアンケートで、例えば「食事は手作りが多いですか、それとも市販の惣菜などの利用が多いですか」といった設問があった場合、高齢者ほど「手作りが多い」という回答が寄せられる傾向が強かった。しかし、実態はどうだろうか。
最近、農林水産省が行った「食品ロス統計調査」の結果を見ると、これとはまったく逆で、高齢者ほど「簡便な食品を利用している」ことがわかる。同調査では全国の1000世帯を対象に17年6月、9月、12月、18年3月の各1週間に使った食品類別食材数について、食事管理者の年齢階層別にどんな食品類を使用しているか調べている。
この中の「調理加工食品」の項目を年齢階層別に見てみると、年齢階層が上がるほど出現数が多くなっており、最も多かったのは65歳以上で48.59だった。これに対して、最も少なかったのは29歳以下で33.49だった。つまり、65歳以上の世帯では29歳以下の世帯の1.45倍も「調理加工食品」を使っている。
その65歳以上が利用している調理加工食品の内訳だが、「惣菜・加工品・その他」が最も多く40.78となっている。次いで多いのは「パン類」の3.94なので、惣菜などの利用が圧倒的に多い訳である。これを29歳以下の世帯で見ると「惣菜・加工品・その他」は23.69なので、65歳以上は29歳世帯以下の1.72倍も惣菜などを利用していることになる。
この調査は、調査客体による実測、記帳に基づく自計申告によるもので、利用している食材がそのまま記帳されているだけに感情的なものが反映されることがなく、現在の日本の家庭における食材の使用実態がそのまま浮き彫りになっている。
~ひとこと~
「食品ロス」というのは、食べ残しのことです。
「食品ロス統計調査」は、そのうち、果物の皮や魚の骨などを除いた飲食可能な部分のうち、重量比でどの程度が捨てられているかを調べています。また、廃棄される食品の内訳で賞味期限切れ、調理に失敗したりなどの食卓に上がらずに捨てられてしまうものが廃棄されるもののうちの半分以上を占めているという現状を考えると、調理に失敗するという要素がほとんどない、調理済み食品である惣菜の利用比率はもっと高いのではないかと思います。
また、感情的なものが反映されない調査結果というのも、それを基に考察する場合重要な要素になります。以下はご当地ラーメンランキングの一節ですが、何故、感情的なものが反映されない調査結果が重要かという理由が書いてあるので載せておきます。
<消費者は何も語れない 潜在的強制力を解明する>
~潜在的強制力・・・文化・生活習慣・時代の気分~
よく考えると当たり前のことですが、消費者の行動は消費者自身も自覚していない無意識下の行動が大半です。
あるマーケティングの本に「消費者の行動の95%は潜在意識化の行動である」と書かれています。無意識下で使われる商品の意味を「なぜ?」と質問してもむだです。聞かれると自分を正当化したり、とりあえず答えるのが消費者アンケートです。そんな調査結果をうのみには出来ません。
それならば、「消費者行動を解明するなんてむだ」というわけではありません。無意識下ですが、消費者は決して無秩序な行動をとったりはしません。無意識下の行動の裏には、これまでのマーケティング理論では明らかにできなかった、見えない大きな力が働いています。
無意識下の行動の裏に潜んでいる大きな力を「潜在的強制力」と呼びます。潜在的強制力でわたしが注目するのが、日本文化や生活習慣、時代の気分です。この潜在的強制力の存在を確認し、消費者行動に及ぼす力学を解明することが、潜在市場においては重要です。
ということのようです。
確かに、アンケートって適当にでも何かを答えようとしますよね。
どっちでもいいってことも多いですし。
しかし、無秩序な行動をとったりはしない・・・無意識下の行動の裏には、見えない大きな力が働いている。そうかもしれません。
少し難しい文章でなんとなく納得させられているという気もしないではないですが、これからの考察は、アンケートを鵜呑みにしないで、見えない大きな力にまで迫ってみたいと思います!
(難しそうですが、そういう気持ちで)
ということなので、
今回は素直に調査結果を信用して話を続けて行きたいと思います。
では、麺業新聞記事の続きです。
<食品業界では、少子高齢化が進む中で、食品の消費性向がどう変化していくか注目されているが、この結果を見る限り、高齢者世帯が増えれば増えるほど惣菜などを含む「調理加工食品」の需要がこれまで以上に高まるといえるだろう。
実際に平日にスーパーやデパートの食品売場をのぞいてみると、老夫婦が惣菜コーナーを訪れ、それぞれ好みの料理を探している光景によく出くわす。また、最近増えてきている住宅街の惣菜専門店でも高齢者の姿を見かけることが多い。
「食の外部化」は今後、高齢者を中心に進行する可能性が高いともいえるのではないだろうか。
そうなった時、めん業界は大きな問題点を抱えているのではないだろうか。それは現在のスーパーや住宅街の惣菜店では、焼きそばやパスタなどは売られているものの、汁気の多いうどん・そば、ラーメンなどが売られていないからだ。
人間、年をとると、汁気のあるもの、しかも温かいものが食べたくなる。めん類はその意味で高齢者が好む食品で、事実、各種の調査結果を見ても高齢者はめん類をよく食べている。
しかし、ここに「食の外部化」という要素がからんでくると、今後の動向が気になる。どう対応するか、今考える必要がある。>
~ふたことめ~
麺業界、お先真っ暗?ここであきらめてはいけません!
でも温かい汁のうどん・そば、ラーメンを調理済みにして惣菜コーナーに並べても、すぐ冷めちゃって、これはホントに不味い食べ物になってしまいます・・・それに代わる近いものとしては、パックもの(主流は、茹で麺にスープ、具材がついているもの)が考えられます。もともとパック商品は西日本でしかほとんど売られていなかったようですが、最近は関東を始め、東日本でも需要があるようです。しかし、惣菜と同列に調理済み食品としては語れないですね・・・そこで、また麺業新聞さんの登場です。麺業新聞さん、ちょっと面白いんですけど、最初の記事が9月15日、そしてこれから紹介する記事が8月4日。9月15日の記事の最後に「どう対応するか、今考える必要がある。」って書いてあったけど、すでにその前に「めんを主体とした惣菜売り場」の提案をちゃんとしてくれています。でも、この提案だけでは、まだ対応しきれていないってことですかね?
去年あんまり読んでなくて、麺業新聞もかなりたまっているので日付をランダムにまとめて読んでいると、こういう発見もあります。ちょっと見てみましょう。
~「めんを主体とした惣菜売り場」への提案~
<調理めん、セットめんは生めん業界が生み出した非常に利便性の高い商品だ。全国的にはコンビニでの販売が主だが、名古屋以西ではスーパーなどでも生めん売り場の主役になっている。最近では関東以北でもスーパーなどでの販売が増えてきており、これらの売り場に占める調理めん、セットめんの割合も高まりはじめている。
こうしたこともあり、調理めん、セットめんが生めん類の出荷額に占める割合は商品単価が高いこともあり、4割以上に達しているのではないかという見方も出てきている。冷凍調理めんまで含めると5割を超えているという声もある。
何故、これだけ調理めん、セットめんの市場が伸びたか。考えてみればすぐわかる。
めんを食べるときに人が必要とするものは、めん、スープ(つゆ)、具財、薬味である。ざるそば(うどん)、かけそば(同)など一部のメニューを除いては、この4点セットは欠かせない。調理めん、セットめんにはこれら4点が全て一緒になっているのだから便利である。
以前、コンビニが全国展開される前は、調理めん、セットめんは名古屋以西での販売がほとんどで、その頃は関東以北では消費者に受け入れられるのが難しい商品と見られていた。しかし、コンビニが全国にでき、販売されるようになったところ、全国の人々に受け入れられた。要は関東以北では調理めんやセットめんが販売されていなかったから、売れていなかったというに過ぎなかった。
ここまで市場が伸びた調理めん、セットめんだが、商品としての欠陥があるといったら怒られるだろうか。
それは「人は弁当に自分の嫌いな物が一つでも入っていたら買わない」という真実があるからだ。調理めんは言い換えるならば、「めんが主役の弁当」である。そしてほとんどの調理めんやセットめんには、薬味としてネギが使われている。ネギは嫌いな人の多い食材だけにこれはやっかいだ。農林中央金庫が高校生を対象に昨年12月に行った調査でもネギは嫌いな食べ物のベスト10にランクされている。これは問題だ。
そこで考えてみると、めん類は素材として、あるいは、めんとスープの組み合わせ、そして弁当(調理めん、セットめん)の形でしか売られていないことがわかる。
スーパーなどでは確かにめん売場以外で、スープ(つゆ)や天ぷら、焼き豚などの具材が売られている。最近ではこれに加え、めん売場でも小袋のスープやある程度の具材も売られるようになってきた。しかし、あくまでも付け足しといった感が否めない。
めん、スープ、具材、薬味の全てを同等に位置づけて、お客が買い易いように並べ、お客が自分の、あるいは家族の好むめん、スープ、具材、薬味を選べる形で販売できないものだろうか。つまり、めんもスープも具材も薬味も様々な種類を個包装にして用意し、この中からチョイスできる形で販売するわけである。「めん売場」ではなく、「めんを主体にした惣菜売場」への脱皮を図ってはどうだろう。
めんの製造直売を行う場合にもこの販売形態が確立できれば、市場が広がると見るが、いかがなものだろう。>
~まとめ~
個包装にして売る問題点
結構、長くなってしまいましたが、ここまでお付き合いいただきありがとうございます。さて、これからの高齢化社会に向け、惣菜の利用比率がたかまるのではないかということ、その中で、温かいそば、うどん、ラーメンをいかに売るかという問題。そして、めんもスープも具材も薬味も様々な種類を個包装にして売るという方法の提案。
いかがでしょうか?まず、様々な種類を個包装にして、スーパーなどで売ることを考えた場合の問題点としては、各商品の販売数量の違いがあると思います。なか川の経験からすると、当然、めんが一番よく売れます。続いて、スープですが多分めんの1/3以下ぐらいの数量になるのではないかと思います。これは、めんは必ずしもめん単独のメニューで利用されるとは限らないということがあると思います。例えば、最近流行の、うどんサラダ、また、すき焼きや鍋物に一緒に入れたり、当然、焼きそば、焼きうどんもあります。また、ストレートスープは重量も重いので、いっぺんにたくさん買うのはちょっとつらいということもあります。そして、具材ですが、これは、先ほどの記事に調理めん、セットめんにネギが入っているのは問題だということがありましたが、家庭で作る場合、別にネギがなくても、残り物のキャベツとか野菜があれば何でもいいと思うので、販売数量はさらにかなり少なくなると思います。薬味に至っては尚更です。
よって、スーパーなど店頭で、ましてや食材売場でスペースを割いて、様々な種類を個包装にして売るという方法は販売効率の面からいって、お店の方が納得しないのではないかと思います。
そして、もうひとつの問題点は、具材の消費期限です。冷蔵で売る場合、販売数量がめんに比べてかなり限られる具材、例えばチャーシューなどせいぜい2日が限界だと思います。こういったものを売るのは非常に難しいと思います。
~個包装の販売は製造直販~
で、ここからが本当のまとめになるのですが、様々な種類を個包装にして売るという方法は一理あると思います。しかし、それは店頭でというのではなく、記事の最後に書いてあるように、めんの製造直売を行う場合には、お客様の需要にも答えることが出来るのではないかと思います。
実際に、なか川でも、チャーシュー、刻みネギなど冷凍の状態で保存しており、そういった需要もあります。しかし、これで市場が広がっているかといえば、そんな大げさなものではありません。
個人のお客様に対してというより、学校給食やイベントといった一度にたくさん必要な場合に需要があるといったところです。
そして、なか川には、めん、スープはもちろん、冷凍保存したチャーシュー、刻みネギ、メンマ、掻き揚げ天ぷらなど、色々取り揃えはあるのですが、個人のお客様に販売する場合、運送会社を使うとクール代金はかかるし、インターネット通販で、そういったものまで売ると注文が複雑になりすぎるし、電話で注文を承るとしても然り。
また、一人前ずつ個包装にすると製造の手間も大変ですし、販売数量も先ほどいったようにそんなに多くないことを考えると設備投資も出来ないし、ということで、ちょっと難しい面もありますが、そういった売り方をこれまで考えていなかったかといえばそんなことはなくて、業務用広島ラーメンのご提案のところにあるように、ラーメン専門店ではないお店でラーメンをメニューに加える場合などの業務用食材としては、需要が見込めるのではないかと思います。