そばのポリフェノール
ポリフェノールって聞いたことがあるでしょうか?
ご存知の方も多いと思いますが、機能性成分であるポリフェノールは、赤ワインブームで有名になりました。といっても、この成分を含んでいるのはブドウだけでなく、チョコレートの原料であるカカオ豆や、イチョウの葉などにも含まれており、すでに医薬品や健康補助食品として販売されています。
実は、そばにもポリフェノールは含まれており、そばの新しい機能性成分として注目されています。
ポリフェノールには多数の同族体があり、植物に含まれる抗酸化物質のほとんどはポリフェノールです。化学的にいえば、亀の甲の形をしたベンゼン環に複数の水酸基(OH基)を持つ化合物の総称、ということになります。
赤ワインで話題になったのは、ブドウの種や皮に含まれるプロアントシアニジンですが、お茶の渋味成分であるカテキンやイチョウの葉に多く含まれるフラボノイドもポリフェノールです。そばの代表的な機能性成分(抗酸化物質)として知られるルチンも、フラボノイドの一種であり、ポリフェノールの仲間に入ります。
ところで、現在の日本の死亡原因は、ガン、心臓疾患、脳血管障害など、いわゆる生活習慣病が約65%を占めています。これらの生活習慣病は食事の内容に起因するところも大きいでしょうが、諸悪の根源は活性酸素という説が有力になっています。
ポリフェノールが話題になったのも、体内の活性酸素を除去する作用をもつ成分ということが明らかになったからです。
活性酵素とは、分子の状態が不安定な酸素をいいます。酸素の化学式はO2ですが、化学反応を起こしやすい酸素と考えることが出来ます。人間は酸素なしでは生きられませんが、体内では、呼吸に利用される酸素の約3~10%が活性酸素に変化するといわれています。
といっても、活性酸素の全てが悪いというわけではありません。活性酸素は、白血球の殺菌作用などの生理現象にも関与しており、ある程度は必要な面もあります。しかし、問題は細胞や遺伝子を直接的または間接的に傷つけることで、こうした酸素毒ともいえる作用が生活習慣病や老化につながっていると考えられています。
もともと生体内には、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)と呼ばれる活性酸素を分解する酵素や、抗酸化物質による活性酸素防御システムがあって、過剰な活性酸素を除去するようになっています。
しかし、SODなどの活性は年齢とともに低下し、体内の抗酸化能力は次第に衰えていきます。また、疾患によっては、体内の除去システムでは対応しきれない大量の活性酸素が発生するケースもあるため、年齢が若くても生活習慣病になってしまうこともあります。
したがって、活性酸素による障害を抑えるためには、有効な抗酸化物質(ポリフェノール)を豊富に含む食品を積極的に摂取する必要があり、それが老化や疾病に対する有効な予防手段となるわけです。
活性酸素が関与していると考えられている疾患は多数ありますが、主として次のようなものがあります。
動脈硬化、アルツハイマー型痴呆、脳血管障害、糖尿病、ガン及びガンの転移、心筋梗塞、虚血症、虚血性疾患、腫瘍、胃潰瘍、肝硬変、脂肪肝、アルコール性肝障害、肺気腫、紫外線障害など。
前述したように、そばの代表的なポリフェノールはルチンですが、最近の研究では、ルチン以外にも豊富に抗酸化物質が含まれていることが分かってきています。中でも注目されるのは、お茶に特有のカテキンや、ブドウで有名になったプロアントシアニジンです。
茶葉のカテキンの機能性については、抗酸化、抗腫瘍、血圧降下、血糖値降下、抗菌、消臭、抗HIV(エイズウイルス)、虫歯予防などの作用が確認されていますが、最近は花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対しての抑制作用の研究も進んでいます。
プロアントシアニジンには、抗炎症、抗菌、抗ウイルスなどの作用があることが分かっていますが、現在は、特に生活習慣病の予防効果が注目されている成分です。
そばのポリフェノールについての研究はまだ始まったばかりすが、健康食品としての利用価値はさらに高まると思われます。さらに近年は、痴呆などの脳障害の予防や治療、中性脂肪やコレステロール低下作用などを目的とした製剤化の動きも出ており、新たな効果が期待されています。